企業法務の仕事

<就活応援企画>私が企業法務を仕事としたこと
第1回 企業法務部員その1       【回答者】 稲田会員(積水化学工業)
【いつ、法律で仕事をしようと考えたのですか?】
大学の法学部を卒業して就職した財閥系商社の3年目でした。大学卒業のときには、法律を仕事にするつもりもなく、華やかなイメージのある商社に入社しました。商社では不良債権の回収部門にいたので、確かに法律の勉強は必要だったのですが、それよりたまたま筑波大学大学院の社会人入試に合格し、授業料の元をとらないとと考えたことがきっかけですね。
【企業法務を仕事とするためにやったことはありますか?】
これといったことはしていないです。強いていうと、法務部員を募集していた現在の会社(メーカー)に転職したことくらいでしょうか。
【現在の主たる業務(研究内容)は?】
国内の契約に関連する相談事が多いと思いますが、特にこの分野といった業務はないですね。社内規則を含めて、法律関係何でも屋です。ただ、最近は若手部員のお手伝いさんが一番近いかな。
【今後企業法務を目指す人たちへのひとこと】
企業法務の範囲が日々拡大しています。そのため大学(法科大学院を含む)の勉強だけでは対応しきれません。しかし、もし現在法律を勉強する環境にあるなら、いろいろな法律に興味をもちつつ、そこでするべき勉強に注力することが、企業法務担当者としての基礎になります。
(2012年12月12日)

第2回 企業法務部員その2      【回答者】村島会員(島津製作所)
【いつ、法律で仕事をしようと考えたのですか?】
もともと大学受験の際に漠然とですが弁護士を目指していました。大学2年の頃から司法試験の勉強を開始し、留年2年目の論文式試験の手ごたえが良くなかったので、直後就職活動を始めました。
そのとき大学の先輩から企業の法務職の話を聞いていたので、就職の際には参考にしました。もっとも私が就職活動をした90年代後半には、「法務」という職種が応募要項に載っている会社は非常に限られていたと思います。今の会社の募集要項にも法務とは特に書かれていませんでしたが、「法務の仕事が向いていると思うが、何でもやります」という姿勢で面接に望んだことを覚えてます。結果的には、入社後当時立ち上がったばかりの法務課(総務部内)に配属されたました。
【企業法務を仕事とするためにやったこと】
特に「企業法務」プロパーでやったことはありません。ただ司法試験の勉強を熱心にやっていて、それが仕事に直接役立つこともそこそこありますし、そうでなくても土台になっていますね。また、卵か鶏かは別として、ビジネス実務法務検定(1級)、司法書士、簿記(2級)の勉強をして、取得しています。
【現在の主たる業務(研究内容)は?】
販売系・技術系・調達系などの各種契約審査・相談を筆頭に、法的な照会(独禁法、下請法、許認可、賃貸借etc.)、それほど多くはないですがトラブル・訴訟対応もしていますし、また案件があれば、資本業務提携、合弁やM&Aへの対応もあります。
株主総会関連業務やグループ内再編も以前はやっていましたが、今は私の担当からは外れています。
【今後企業法務を目指す人たちへのひとこと】
メーカーに限らず(と思いますが)どの会社も厳しいコストダウン競争・グローバル競争にさらされています。そんな中でコスト部門である管理部門を希望する意味を感じられる人が双方にとって望ましいと思います。
今やインハウスローヤーの数が700人以上、彼ら・彼女らが活躍する時代が来る時のことを考えると、これからは司法試験に受かっておいた方がよいのかもしれませんね。あと英語は鍛えておいて絶対に損はありません。
(2012年12月14日)

第3回 大学教員       【回答者】大島会員(大阪経済法科大学)
【いつ、法律で仕事をしようと考えたのですか?】
大学を卒業して某地銀に勤務をしていたのですが、その際金融機関と取引先企業の関係は公平であるべきだと感じることがあり、債権者・債務者の双方にとって公平な制度はどうあるべきか、という問題意識を持ったことがきっかけです。
【企業法務を仕事とするためにやったこと】
私は経済学部出身であったため、まずは法律に関する知識を得る必要があると感じました。銀行員の当時は六法が何かもわからない状態でしたが、ちょうど法科大学院の制度が創設される時期であり、そのことを新聞で知って、法科大学院に入学しました。
【現在の主たる業務(研究内容)は?】
大学教員ですので実務を行っているわけではありません。ただし、企業法務は私の研究対象である民法、特に担保制度に密接に関連しています。その中でも特に、不動産や動産、債権を利用した資金調達に関心があり、いわゆる動産・債権譲渡特例法を利用した資金調達を研究しています。
【今後企業法務を目指す人たちへのひとこと】
私は銀行員時代を含め企業法務の経験はほとんどありませんが、振り返ってみると、法律を学ぶ際には①問題点はどこにあるのか、②学んだ制度がどのような状況で具体的に利用されるのか、という点を常に意識していれば、理解が深まり、実際に使う場合に有用だと思います。
(2012年12月18日)

第4回(最終回) 弁護士      【回答者】吉田会員(栄光総合法律事務所)
【いつ、法律で仕事をしようと考えたのですか?】
大学4年生の頃です。大学時代は文学部で倫理学を専攻していたのですが、就職活動に有利になるかなと考えて大学3年生の時に法律の勉強を始めたんです。その後、どんどん法律の勉強にのめり込んでいきました。大学4年生の時には法律を使った仕事をしたいと思うようになり、弁護士を目指しました。
【企業法務を仕事とするためにやったこと】
大学時代に目指した弁護士は一度あきらめてしまい、一旦は会社に就職しました。しかし、法律の仕事をしたいという思いが再び湧き上がり、思い切って法科大学院に入学し、勉強のかいもあって(笑)、無事に一発で弁護士になることができました。弁護士になってからは、企業法務を中心に取り扱っている法律事務所に絞った就職活動をしました。
【現在の主たる業務(研究内容)は?】
私が勤務する法律事務所は、様々な規模・業種の会社をクライアントとする事務所なので、企業法務に関する多様な案件を経験することができています。私自身は、債権回収案件や取引上のトラブルに関する案件を主に担当しています。それに、顧問先企業の契約書のリーガルチェックも担当しています。
【今後企業法務を目指す人たちへのひとこと】
会社法、労働法、知的財産法、倒産法、消費者法、環境法など、企業法務を担当する弁護士が学ぶべき法律分野は多岐にわたります。企業活動に関する様々な法律問題に対応できるよう、学び続ける姿勢が重要です。
(2012年12月21日)